東京電力福島第一原子力発電所の事故で、山形県などに避難した660人余りが避難生活で精神的な苦痛を受けたとして、国と東京電力に賠償を求めた裁判の2審の判決で、仙台高等裁判所は、1審に続いて東京電力に対し、一部の原告への賠償を命じた一方、国の責任は認めませんでした。

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県から山形県などに避難を余儀なくされた185世帯669人は、避難生活で精神的苦痛を受けたなどとして、国と東京電力に対し、1人あたり300万円、合わせて20億4600万円余りの賠償を求めました。

1審の山形地方裁判所は5年前の2019年、東京電力に対し、原告5人に合わせて44万円の賠償を命じた一方、国の責任は認めず、原告が控訴していました。

17日の2審の判決で、仙台高等裁判所の石栗正子裁判長は「国が、東京電力に津波による事故を防ぐための適切な措置を義務づけ、義務が履行されたとしても、事故を回避することができなかった可能性が高い」などとして、1審に続いて、国の責任は認めませんでした。

一方、東京電力に対しては、原告の一部に避難生活に対する慰謝料などとして、合わせて6000万円余りを支払うよう命じました。

原告団の弁護士によりますと、賠償の対象の原告は、およそ350人で、1審判決より大幅に増えたということです。

原発事故で避難した人などが、国と東京電力を訴えた集団訴訟では、最高裁判所が2022年、国の賠償責任を否定する判断を示したあと、名古屋高裁や東京高裁などで国の責任を認めない判断が続いています。

原告弁護団「不当判決 上告を検討」

原告の弁護団は判決のあと、記者会見を開き、外塚功弁護士は「国に対する責任が認められず不当判決だ。最高裁判所が、国の責任を否定したあとは、高等裁判所のすべての判決で国の責任が否定されていて、全国的なふんばりが必要だ。今後、上告して、引き続き国の責任を追及することを検討している」と話していました。