外国人など「日本語の指導が必要」な子どもたちのおよそ20人に1人が、特別支援学級で学んでいる。

それ以外の子どもに比べて、1.4倍余り多い。

これは文部科学省が25日に公表した、特別支援学級に在籍する外国人や外国にルーツがある子どもたちの実態について、初めて行った調査の結果わかったことです。

調査の結果は?そもそも特別支援学級って?
なぜ外国人や外国にルーツがある子どもたちが多いの?
わかりやすく解説します。

文部科学省が行った調査とは?

特別支援学級に在籍する外国人や外国にルーツがある子どもたちの実態を把握しようと、初めて行われた全国調査です。

外国人など日本語の能力が十分ではない子どもたちが、多く特別支援学級に入っているのではないかという指摘が相次いだことなどから、実態を明らかにして、外国人や外国にルーツがある子どもたちの教育の環境を改善することを目指しています。

調査の結果は?

全国の公立の小中学校で学ぶ子どものうち、外国出身だったり保護者が外国人だったりして「日本語の指導が必要」とされた子ども5万2396人のうち、約5.1%にあたる2691人が特別支援学級で学んでいることが分かりました。

一方、「日本語の指導が必要」とされる子ども以外では901万2491人のうち、約3.6%にあたる32万878人でした。

※全国の公立の小中学校の特別支援学級で学ぶ子どもたちの割合は、日本語の指導が必要な子どもではおよそ「20人に1人」に対して、それ以外の子どもはおよそ「30人に1人」で、1.4倍余りの差がありました。

そもそも特別支援学級とは?

障害のある子どもたちを対象にした少人数の学級で、公立の小中学校などに設けられています。

通常の学級は学年ごとにクラスが分かれていますが、特別支援学級は子ども一人ひとりの特性に応じた教育が行えるよう、障害の種類別に授業を行うのが特徴です。

対象となる子どもたちは?

文部科学省が2013年に全国の教育委員会などに出した「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について」という通知では、次の7つの障害の種類を挙げています。

「知的障害」「肢体不自由」「病弱・身体虚弱」「弱視」「難聴」「言語障害」「自閉症・情緒障害」

「日本語が不十分」だと対象になるの?

文部科学省に確認したところ、対象になるのは障害のある子どもだけで「日本語が不十分」という理由で特別支援学級に入ることはないということです。

特別支援学級で学ぶ子どもはどう判断しているの?

先ほどの文部科学省の通知には、判断の方法についても次のように記載されています。

“障害の判断に当たっては,障害のある児童生徒の教育の経験のある教員等による観察・検査,専門医による診断等に基づき教育学,医学,心理学等の観点から総合的かつ慎重に行うこと”。

つまり「最終的に特別支援学級を勧めるべきか」だけでなく「障害があるかどうか」の判断も、専門の医師ではなく市区町村の教育委員会が行う仕組みとなっています。

なぜ、特別支援学級で学ぶ外国人の子どもが多いの?

愛知県豊田市の「豊田市こども発達センター」で外国人の子どもたちを数多く診察してきた医師の高橋脩さんに聞きました。

「特別支援学級の対象となる7つの障害の種類のなかで、特に判断が難しいのは知的障害なのではないかと思いますが、現状では、本来、知的障害のない子どもたちが、特別支援学級を勧められる事態が起こっていると考えられます」(高橋医師)

子どもの知的障害の有無の判断は、言語能力や家庭・文化的な背景が結果に影響することから、外国人の子どもたちの場合には慎重に検討するべきだということです。

また、判断する際に用いられる検査は日本人の子どもたちを対象に開発された検査であり、日本語能力も十分に発達しておらず、日本の文化もよく理解できていない、外国人の子どもたちに用いて知能を評価すれば、結果的に低い評価になるおそれもあるということです。

特別支援学級で学ぶ外国人の子どもはどう判断されているの?

現状では、外国人や日本語が母語ではない子どもの場合にどう判断するかについては、明確な決まりはありません。

このため、検査に通訳を付けるかどうかなど具体的な対応は、自治体によってばらつきがあります。

ある自治体の関係者は、検査などの際には必ず通訳を付けているものの判断に困るケースも少なくないと話していました。

日本で学ぶ外国人の子どもはどれくらいいるの?

文部科学省によると、全国の公立の小中学校で学ぶ日本語指導が必要な児童や生徒は5万2000人あまりと、前回の2018年の調査時よりも6000人あまり増えています。

日本に定住する外国人が増えているのに伴って、公立の学校で学ぶ外国人や日本語が母語ではない子どもたちも増え続けていることが背景にあります。

外国人の子どもをめぐる学びの環境は?

外国人や外国にルーツがある子どもたちの学びの環境は、地域によって大きな差があるのが現状です。

特に外国人の人口が少ない地域などでは、学校で日本語を指導する体制が整っていなかったり、保護者とのコミュニケーションに課題があったりすることなどが指摘されています。

公立の小中学校で学ぶ日本語指導が必要な児童のなかで、学校内に設けられた「日本語教室」など在籍するクラス以外で日本語指導を受けている子どもの割合は、外国籍で73.5%、 日本籍で67.6%でした。

日本語教育の充実に向けた取り組みは?

2019年6月には「日本語教育の推進に関する法律」が施行されました。

それに伴い、公立の小中学校への日本語教室の設置や日本語教師の配置など、各地で日本語教育の充実に向けた取り組みが進められています。

一方、海外では、移民の子どもに対する公用語教育を正式な「教科」として位置づけたり、教員を養成する課程で公用語教育の教科を必修にしたりしている国もあります。

外国人や外国にルーツがある子どもたちへの日本語教育の充実は、そうした子どもたちの進学や、将来の職業選択に大きく影響するため、教育環境を早急に整えていくことが求められています。