ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から24日で3か月となります。ロシア軍はウクライナ東部2州の完全掌握に向けて攻勢を強めていますが、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍が反撃し、双方の攻防は収束の兆しが見えないまま長期化する見通しです。

ロシアがことし2月にウクライナに軍事侵攻してから24日で3か月となります。

ロシア軍は20日、激しい攻防を続けてきた東部ドネツク州の要衝マリウポリを掌握したと宣言したあと、ドネツク州と隣接するルハンシク州の完全掌握を目指していて、国防省は23日も各地をミサイルなどで攻撃したと発表しました。

特にルハンシク州については近く全域を完全掌握する見通しだとしていて、州内でウクライナ側の最後の拠点とも言われるセベロドネツクへの攻勢を強めています。

ただロシア軍は部隊の指揮系統や兵器の不足など多くの課題も指摘されていて、これに対し、ウクライナ軍は欧米の軍事支援を追い風に反撃を強め、東部で攻防が激しくなっています。

一方でロシアは、掌握したとする南部ヘルソン州などで支配の既成事実化を強めていて、23日には州の親ロシア派の代表者が「ロシアの通貨ルーブルとウクライナの通貨フリブニャを同時に使用する」と主張しました。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、世界の政財界のリーダーが集まる「ダボス会議」でオンライン形式のスピーチを行い「ロシアや、隣国に対して残忍な戦争を起こそうとする他のすべての潜在的な侵略者が、その行動に対する結果を明確に知ることができるよう最大限の制裁を行うべきだ」としてロシア産の石油の禁輸や貿易の停止など、ロシアへの制裁を最大限に強化するよう訴えました。

これに対し、ロシアのプーチン大統領は23日、黒海沿岸のロシア南部のソチでベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、「あらゆる困難にも関わらず、ロシアの経済は制裁の打撃に耐えている」と述べ、同盟関係にあるベラルーシとの間でも、安全保障や経済問題をめぐり、両国の連携を強めていく考えを示しました。

侵攻から3か月がたち、東部や南部を中心に支配を強めようとするロシアと、これを押し返そうとするウクライナの攻防は、収束の兆しが見えないまま長期化する見通しです。

ロシア 戦略の修正余儀なくされたか

ロシアは侵攻当初、短期間でウクライナのゼレンスキー政権を降伏させ、ロシア寄りの政権を樹立させたい思惑があったものの、ウクライナ軍の徹底抗戦を前に、戦略の修正を余儀なくされたとみられています。

ロシア軍は2月24日の軍事侵攻当初、ウクライナの東と南、それに、北に位置するベラルーシからも地上部隊を進軍させました。そして各地のウクライナ軍の施設をミサイルで破壊したほか空てい部隊が首都キーウ近郊にある軍の飛行場を襲撃するなど、一斉に攻撃を加え、早期のキーウ掌握によるゼレンスキー政権の打倒を図ったとみられています。しかし、ウクライナ側が激しく抵抗した結果、ロシア軍は、ウクライナの制空権を完全には制することができなかったうえ、部隊の運用や補給面での失敗が伝えられ、兵士の士気の低下も指摘されるようになりました。

戦況がこう着すると、ウクライナ各地で住宅地や民間の商業施設などに対する無差別な爆撃が目立つようになりました。ロシア国防省は、3月29日、トルコで行われたウクライナとの停戦交渉のあと、キーウや周辺での軍事作戦を大幅に縮小すると表明し、早期のキーウ掌握を事実上、断念します。そして軍事作戦の重点をウクライナの東部や南部に移行するとして、指揮統制の一元化を目指し、南部軍管区のトップ、ドボルニコフ司令官が、新たに指揮をとることになったと伝えられました。

最大の激戦地となったのは東部の要衝、ドネツク州マリウポリです。防衛の中心をになったウクライナの準軍事組織「アゾフ大隊」を激しい市街戦のすえ包囲し、拠点のアゾフスターリ製鉄所を攻撃し続けました。ロシアは5月9日の戦勝記念日までにマリウポリを陥落させたい思惑があるとされていましたが、ウクライナ側の抗戦は続き、プーチン大統領は記念日の演説で、戦闘の具体的な成果には言及しませんでした。その後、ロシア軍が製鉄所に集中的な砲撃をくわえて制圧し、マリウポリ全域を掌握したと発表したのは今月20日のことでした。

ロシア軍は現在「ドンバス地域」と呼ばれる東部の2州、ドネツク州とルハンシク州の完全掌握を目指し、東部ハルキウ州の部隊を南下させるともに、マリウポリから部隊を北上させています。一方、ウクライナ側は徹底抗戦の構えを崩しておらず、ロシア軍の部隊は、ハルキウ周辺では国境まで撤退を余儀なくされるなど、一進一退の攻防となっています。

戦闘が長期化し、ロシア軍の苦戦が伝えられる中で懸念されているのが、ロシアによる生物兵器や化学兵器、さらに核兵器の使用です。プーチン大統領は、軍事侵攻の直後から自国の核戦力を誇示し、核弾頭を搭載できるミサイルの発射実験を行うなど、ウクライナと欧米諸国に対するけん制を強め、予断を許さない状況が続いています。

ウクライナ軍 欧米の軍事支援や高い士気背景に激しい抵抗

ウクライナ軍は、規模で上回るロシア軍に対し当初は劣勢を強いられるという見方も出ていましたが、欧米からの軍事支援や部隊の高い士気を背景に激しい抵抗を続けています。

ウクライナ側の激しい抵抗を可能にしている要因として指摘されるのが、欧米などからの軍事支援やドローンやIT技術を駆使した戦術、それにNATO=北大西洋条約機構やその加盟国による軍事訓練のほか、軍や国民の高い士気です。これらのうち効果を発揮したとされる軍事支援の1つが携行可能な対戦車ミサイルの「ジャベリン」で、兵士が1人でも運べる機動性がウクライナ軍の効果的な反撃につながったと専門家などが指摘しています。

さらに5月11日ごろ、東部のルハンシク州では、川を渡ろうとしていたロシア軍に対し、ウクライナ軍はアメリカから提供された「りゅう弾砲」を用いて攻撃を行ったとしていて、ロシア軍の戦車や装甲車など70台以上の破壊に成功したと主張しています。この攻撃についてイギリスの新聞「タイムズ」は、「GIS Arta」というウクライナ人のプログラマーなどが開発したシステムが威力を発揮したと伝えています。このシステムは、偵察用ドローンやGPSなどから送られた戦場のデータによって敵の位置を特定すると、計算ソフトが処理してその地域にあるどの兵器が攻撃に最も適しているかを判断するということです。これにより、敵の位置を把握してから発射するまでにかかる時間は、従来の20分以上から1分程度に短縮できたとしています。

また、8年前に南部のクリミアがロシアに一方的に併合されて以降、NATO加盟国がウクライナに対して続けてきた軍事訓練が功を奏したという指摘も多くあります。このうち、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、訓練を通じて軍の考え方の「改革」が行われたと伝えています。

具体的には、上官に対して意見が言えない旧ソビエト時代からのあり方を改めて、意思決定の権限をできるだけ現場に近い兵に委ね、状況に合わせた柔軟な行動を可能にしたということです。こうした柔軟で機敏な動きは、ロシア軍にとっては予測がしづらいとしていて、アメリカから指揮官としてウクライナの訓練拠点に駐留していたジョン・オークリーさんも、NHKの取材に対し「われわれの指針の強みはその柔軟さにあり、ロシア軍はそのような戦い方はしない。これはウクライナ軍に大きな優位性を与えている」と指摘しました。

また、アメリカのペトレアス元CIA長官は、「何にもまさるのはウクライナ軍兵士の士気だ。士気は、訓練で教え込むことはできない。今はウクライナの国全体が高い士気に包まれている」として、国土防衛にかける士気の高さがロシア軍との大きな違いだと指摘しています。

首都キーウ 戦闘の終結やウクライナの勝利を願う声

ウクライナにロシア軍が侵攻して3か月となり、首都キーウでは少しでも早い戦闘の終結やウクライナの勝利を願う声が聞かれました。

激しい戦闘が続く東部ルハンシク州出身の26歳の女性は「両親はロシアが占領する地域から避難することができませんでした。ウクライナのすべての人が戦争の一刻も早い終結を望んでいます」と話していました。
58歳の男性は「この3か月は長すぎましたが、戦争はまだ続くかもしれません。私が学生時代を過ごしたクリミアやドンバスなど、国連が承認した国境線に戻ることが私たちの勝利です」と話していました。
また69歳の男性も「どんなに時間がかかっても勝利しなければなりません。勝利とは、ロシアがウクライナに2度と侵攻できないようにし、クリミア、ドンバスを含む私たちの領土を完全に取り戻すことです」と話し、戦闘が長期化したとしても領土の奪還を目指すべきだと主張していました。

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