ミャンマーでは軍がクーデターを実行してから1週間がたちました。軍による情報統制が強まる中でも市民の抗議活動は拡大していて、軍が今後こうした動きにどう対処するかが焦点となっています。

ミャンマーでは今月1日、軍がクーデターを実行し、アウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領などを相次いで拘束し、非常事態宣言を出して軍トップのミン・アウン・フライン司令官のもと全権を掌握しました。

これに対して、市民はSNSを通じて抗議の声を上げるとともに職場や学校ごとにデモを行うと、通信当局はインターネット通信を一時遮断する措置をとりました。

しかし抗議の動きは拡大を続け、7日は最大都市ヤンゴンで数万人が街頭に出てスー・チー氏が率いる政党、NLD=国民民主連盟のシンボルカラーの赤いシャツを着てスー・チー氏らの解放などを訴えました。

こうした抗議活動に対して、警察が軍の指揮のもと一部の活動家を逮捕したりデモの参加者の身柄を拘束したりしています。

また、タイとの国境の町ミャワディーで7日行われたデモでは、参加者によりますと、デモ隊が警戒に当たる警察に近づいた際、警察官が空に向けて威嚇射撃を行う場面もありました。

ミャンマーでは1988年の民主化デモで、軍がデモ隊を強制排除した際、大勢の犠牲者が出たことがあります。

クーデターに抗議する市民の動きはさらに拡大するとみられ、軍が今後どう対処するかが焦点となっています。

国境の町ではスー・チー氏政党の旗

ミャンマー南部の国境の町ではアウン・サン・スー・チー氏が率いる政党NLD=国民民主連盟の旗が一部の住宅に掲げられていて、国民の間でクーデターへの抵抗が根強いことがうかがえます。

ミャンマーは新型コロナウイルスの影響もあって外国人の入国を厳しく制限しているため、NHKは7日、ミャンマー南部の国境の町ミャワディーの様子をタイ側から取材しました。

タイ側では国境警備が厳重に行われていましたが、川を挟んだ対岸のミャンマー側では住民たちが洗濯物を干したり川で泳いだりとふだんと同じ光景が見られました。

しかし、複数の住宅がアウン・サン・スー・チー氏が率いる政党NLD=国民民主連盟の旗を掲げているのが確認できました。

また、取材班に向かって旗を振る住民もいて、国民の間でクーデターへの抵抗が根強いことがうかがえます。

一方、タイとミャンマーの国境の検問所では多くのトラックが行き交い、2国間の物流に支障はないということです。

ただタイの商工会議所によりますと、ミャンマー側の農家がトウモロコシをタイ側に輸出する量がいつもより増えているということで、クーデター後の混乱を懸念する農家が現金化を急いでいるのではないかとみられています。

ミャンマーから戻ってきたトラックの運転手は「多くのトラックが急いでミャンマーに向かっている。クーデターの影響で今後物流が混乱した場合、商品が傷むのを心配しているのかもしれない」と話していました。

隣国タイでも抗議活動

ミャンマーの隣国タイの首都バンコクでは、7日もミャンマー人ら500人が国連の事務所が入る建物の前で抗議活動を行い、スー・チー氏らの解放を求めました。

参加者たちはスー・チー氏の写真を掲げたり、タイの反政府デモで強権的な政治への抵抗を示すために使われている3本の指を立てるポーズをとったりしながら「独裁政権を倒せ」とか「スー・チー氏が健康でありますように」などと声を上げました。

参加した24歳の男性は「ミャンマーにいる人たちを国外から支援したい。私たちは本当の民主主義を求めている」と訴えていました。