陸上の女子100メートルと200メートルで日本記録を持つ福島千里選手が、現役引退を発表しました。

福島選手は北海道出身の33歳。



鋭いスタートとピッチを生かした走りで、女子100メートルで11秒21、200メートルで22秒88の日本記録を持っています。



オリンピックには2008年の北京大会から3大会連続で出場し、日本選手権では、2011年から6年連続で100メートルと200メートルの2冠を達成するなど圧倒的な強さを誇りました。



近年はけがなどもあって不振が続いていて、東京大会出場を目指していましたが、去年6月に行われた代表選考を兼ねた日本選手権の100メートル予選で12秒02で敗退し、オリンピック4大会連続出場を逃していました。



その後、今シーズンは太ももの肉離れの影響もあり思うような成績をあげられず、去年9月に大阪で行われた全日本実業団選手権のあと、福島選手は今後の去就について「ゆっくり考えたい」と話していました。

けがに苦しんだ最後のシーズン

日本女子短距離界のエースも近年は、アキレスけんの痛みや太ももの肉離れに悩まされてきました。



トップスプリンターにしばしば見られるアキレスけんの痛みは、本来のピッチを生かした走りを奪い、昨シーズンは肉離れの影響もあり満足のいく練習ができなかった時期もありました。昨シーズンのベストタイムは11秒78と自身の持つ日本記録から0秒5以上も遅いタイムにけがの影響があらわれていました。



こうした状況の中でも福島選手は「オリンピックを目指さないわけにはいかない」と自国開催となる東京オリンピックへの強い気持ちを口にするなど、前向きな発言を繰り返してきましたが、最終選考会となった日本選手権で結果を残すことはできませんでした。



けがに悩まされた日本女子短距離界の第一人者は自国開催の大舞台でトラックを駆け抜ける姿を見せることなく、新しいシーズンを前に現役引退を決断しました。

恩師「本当にお疲れさま」

福島選手が以前、所属していた「北海道ハイテクAC」の元監督で、高校卒業後からおよそ10年間にわたって福島選手を指導した中村宏之さんは「あれだけ好きな陸上を一生懸命やって、ある意味で燃え尽きた訳ですから後悔はないと思います。ご苦労さんというひと言ですね。本当にお疲れ様でした」とかつての教え子をねぎらいました。



また、中学時代の福島選手を初めて見たときのことを振り返り、「1人だけ、音がしない、すいすいと走る子がいるわけですよ。大きな声でこの子は日本一になると、必ず日本記録を作るって、大声で叫んだことを覚えています」と話していました。



そのうえで「すごい一生懸命な子。自分に妥協せずに常に練習も全力だった。走って倒れて、お尻が痛い痛いって言うんですけど、短距離でそういう選手は私の周りでは彼女しかいない。それだけ練習でも出し切るという思いが強かった」と話していました。



そして、福島選手の今後については「彼女がやり得なかったことや、いろいろな思いや得たことを次のランナーに伝えていく責務があると思います。彼女ならやるんじゃないですか。このあとが楽しみです」と期待を寄せていました。