静岡県熱海市で起きた土石流の起点にあった盛り土の造成をめぐり、県と熱海市の対応が適切だったかどうかを検証する県の第三者委員会は28日、これまでにまとめた中間報告を公表し、盛り土が崩れる危険性に対する県と市の職員の認識について、「今回のような大規模崩落を予想した関係者はほとんどいなかった。想像できなかったことは誠に残念だ」と指摘しました。

去年7月、静岡県熱海市で起きた土石流では災害関連死も含めて27人が犠牲となりました。

その起点にあった盛り土の造成をめぐっては、県が設置した第三者委員会が当時の県と市の対応が適切だったかどうか、行政文書や職員への聞き取りなどをもとに検証を進めていて、28日、記者会見を開いて中間報告を公表しました。

この中で、盛り土が崩れる危険性を県と市の職員がどの程度認識していたのかについて、「今回のような大規模崩落を予想した関係者はほとんどいなかった」と指摘しました。

さらに、2011年2月に盛り土を含む土地の権利が今の土地所有者に移ったあと、担当職員の人事異動の際に後任者への引き継ぎがなされていなかったなどとして「現場を注視する姿勢が急激に薄れてしまったと推測される」と指摘しました。

そのうえで「大規模崩落の危険性を想像できなかったことは誠に残念である」としています。

また、11年前、熱海市が県と対応を相談したうえで盛り土を造成した不動産会社側に安全対策を実施するよう命じる文書を作成しながら、発出を見送った対応が適切だったかどうかについては、市が行っている調査の結果を踏まえて判断するということです。

会見で第三者委員会の青島伸雄委員長は「当時、職員は危険はあるかもしれないと思ったけれども、あれだけの大災害にまで及ぶというところまで認識していなかったのではないか。もし認識していたとすれば、それなりの対応ができたのではないか」と話していました。

熱海市は来月中を目標に調査結果をまとめる方針で、県の第三者委員会はそのあと、最終的な報告書を取りまとめることにしています。

静岡県 難波副知事「県の対応が十分ではなく大変残念」

第三者委員会がまとめた中間報告について静岡県の難波副知事は「県の対応として十分でなかったことが1つではなく多々あるということで、大変残念に思います。そして、亡くなられた方々、被害に遭われた方々に対して大変申し訳なく思います。内容についてこれからしっかり精査をして対応を考えてまいりたい」と述べました。

また、中間報告の中で、後任者への引き継ぎがなされなかったことで「現場を注視する姿勢が薄れた」と指摘されたことについて、難波副知事は、途中から引き継ぎがなくなったことや、2012年以降、危険性の認識が薄れていたことを明らかにしました。

そのうえで「前任者がなんとかしなければいけないと思えば、後任者に『ここが問題だ』と引き継ぐのが普通だと思うが、前任者の時点ですでに危険性の認識が薄れて、後任者に引き継がないといけないほどの問題事項だと考えていなかったと思う。これについては今後、事実関係の整理や職員への聞き取りが必要だ」と話していました。