アメリカのバイデン政権は新年度の「予算教書」で、国防予算を前の年度より4%増やし、ウクライナに軍事侵攻するロシアと、海洋進出の動きを強める中国に対抗する姿勢を鮮明にしました。

バイデン政権は28日、ことし10月から始まる新たな会計年度の予算について、議会に政府の考え方を示す「予算教書」を発表しました。

それによりますと、歳出の総額は5兆7920億ドル、日本円でおよそ710兆円と、前の年度より1%減らしました。

このうち、国防予算については、8130億ドル、日本円で100兆円と、前の年度より4%増やしました。

この中には▼ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を踏まえた措置としてNATO=北大西洋条約機構を強化するための費用や、▼海洋進出の動きを強める中国に対応するためインド太平洋地域における抑止力の強化に向けた費用が盛り込まれ、ロシアと中国に対抗する姿勢を鮮明にしました。

また、国防予算以外では、政権が看板政策に掲げる教育支援や気候変動対策に重点配分するとしています。

一方、課題となっている公的債務の拡大に歯止めをかけるために、法人税率の引き上げや富裕層への増税などを実施して、財政赤字を今後10年で120兆円以上、圧縮するとしています。

ただ、こうした増税案は去年の政権発足直後にも提案したものの、野党・共和党だけでなく、与党・民主党内からも反対意見が出て実現できなかったため、今後の議会の対応が大きな焦点になります。

バイデン大統領「世界は変わってしまった」

国防予算を増額する方針を示したことについてアメリカのバイデン大統領はホワイトハウスでの会見で「プーチン大統領のウクライナ侵攻による経済や人道面、そして安全保障への影響に力強く対応するためのものだ」と述べました。

そして「中国やロシアといった国々との競争の激化に直面する中、宇宙やサイバー分野への投資が必要になっている。国防予算の増額を好まない人もいるだろうが、世界は変わってしまったのだ」と述べて理解を求めました。