「ベンダーロックイン」と呼ばれる、情報システムを導入した企業以外がメンテナンスなどを行えず、他社の参入が難しくなる状態について、公正取引委員会は、他社の入札参加を難しくする行為などが企業側にあれば、独占禁止法に違反するおそれがあるとする報告書をまとめました。

「ベンダーロックイン」について公正取引委員会は、去年6月から中央省庁や地方自治体などを対象に調査を行い、1021機関からの回答をもとに報告書をまとめ、8日、公表しました。



情報システムの保守や改修の際の契約相手について尋ねた質問では、従来の企業と再度契約したことがあると答えたのが98.9%を占め、このうち48.3%は、その理由として「既存事業者しかシステム機能の詳細を把握できなかった」と回答しました。



公正取引委員会は、情報システムに詳しい人員が十分でないことなどを背景に、官公庁でベンダーロックインが広がっているとみています。



そのうえで、報告書は独占禁止法に違反するおそれがある行為として、不正確な情報を官公庁に提供して、自社だけが対応できる入札とすることや、合理的な理由がなく他社への仕様の開示を拒否すること、不利益を示唆して他社に委託しないよう要求することなどを示しています。



公正取引委員会調整課の小室尚彦課長は「多様な事業者が新規参入できているか引き続き注視していく。情報システムでの独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していく」と話しています。

「ベンダーロックイン」解消目指す自治体も

自治体の中には、職員がスキルを高め、ベンダーロックインの解消を目指すところもあります。



千葉県船橋市では、情報システム課の職員がITコンサルティング会社と連携し、事業者の見積もりに改善点がないか事前に検証しています。



その結果、今年度の予算では、複数の会社から見積もりをとったうえで必要ない工程を指摘するなどして、担当課の要求額から、1億円、率にして5%を削減したということです。



中心となっているのは、1994年に市に採用された千葉大右課長補佐で、10年ほど前にマイナンバー制度を担当したことをきっかけに、勉強会に参加するなどしてシステム関係の知識を身につけました。



現在は、総務省の地域情報化アドバイザーや行政のデジタル化を進めるNPOの代表理事も務めています。



千葉課長補佐は「IT事業者が過大な費用を要求するという話もある。小さな自治体では苦しいとこもあると思うが、長期的なビジョンで研修を行うなど、職員の中に専門的な知識を蓄積していくことが大事だ」と話しています。