熊本地震をきっかけに導入された被災者支援のデジタル技術、自治体への普及が進んでいません。去年、国が導入した物資支援のシステムについて、南海トラフの巨大地震で被害が想定される市区町村では災害時に使うことを決めているか、使う方向で検討している自治体は半数程度にとどまっていることがわかりました。内閣府は、わかりやすいマニュアルを作るなどして活用を促す方針です。

一連の熊本地震では国や自治体などとの間で情報が錯そうし、物資が不足する避難所が相次いだことから、国は「物資調達・輸送調整等支援システム」を開発し、去年4月から運用を始めました。

市区町村の職員は電話やファックスに代わり、専用のウェブサイトで必要な物資を要請できるほか、到着予定時刻など輸送の状況も関係者で共有できます。

一方、先月、内閣府が南海トラフの巨大地震で大きな被害が予想される29の都府県と、683の市区町村とともにシステムの訓練を行い、対応できたかアンケートしたところ全体のおよそ80%が「対応できた」と答えた一方、およそ20%は「十分対応できなかった」と答えました。

さらに活用状況について聞いたところ、「計画などに位置づけている」、「使用する方向で検討している」と答えたのは都府県が82%だったのに対し、市区町村は55%にとどまりました。

「使用するかどうか含めて検討中」と答えた市区町村は40%で、「現状で使用する予定はない」と答えたところも6%ありました。

活用に前向きではない自治体に尋ねたところ、「操作をあまり理解できておらず、すべての職員が対応できるか不安」などの声も寄せられたということで、内閣府はわかりやすいマニュアルを新たに作るなどして活用を促したいとしています。

災害時の物資の支援に詳しい防災科学技術研究所の宇田川真之主幹研究員は、「物資支援は市町村の日常業務になく、どのようなことをしなければいけないかわかりにくい特徴がある。自治体側が人材育成を進めることも大事だ」と話しています。